結論から言うと、かなり難しい。自分の中では、ほぼ無理だという結論が出ている。
服が好きである。妻がファッション診断士をやっているのもあり、気づけば部屋が服だらけになっていた。どうせなら猟装にもこだわりたいとおもった。
・人に会って恥ずかしくない。
・清潔感がある。
・全体が綺麗に整っている。
そういう装いを狩猟に持ち込めないかと、真剣に考えていた時期がある。自分なりの「狩猟の正装正装」ができれば、と。
誰に見られているのか
初めて入る猟場を下見しているとき、地域の方と話をすることは度々ある。自分から挨拶することも多い。そのときに、胸を張って挨拶できる格好でいたい。
だらしない格好で銃を持っていたら、信用されない。清潔感も必要である。だから身なりを整えておきたかった。
最初に行き着くのはアウトドアブランド
丈夫な服がいい。動きやすい方がいい。そういう情報は出てくる。では具体的に何を着ればいいのか。おしゃれと機能性を両立する服として最初に候補に挙がるのは、やはりアウトドアブランドだった。
ブレイズオレンジ。リアルツリー。迷彩。ハンティングジャケット、フィッシングベスト、カーゴパンツ。
探しているうちに、気づいたことがある。売られているものの多くは「おしゃれアウトドア」だった。
自分が欲しかったのは、機能性が先にあって、その後にファッションが来るものだ。だが実際に並んでいるのは、ファッションが先にあって、後からアウトドアの雰囲気が乗っているものだった。
理由は分かる。ターゲットの母数が多い方が売れる。
古着に流れ着く
店で生地を触って、これはすぐ破れそうだな、と不安になることは実際にあった。
企業がわざわざ別レーベルを立てるほどに、ファッションの文脈と現場の文脈は違うらしい。同じ看板の下では両立しないから、分けられた。NORTH FACEなどはその良い例だと思う。あとkarrimorとか。
量産されるのは、機能重視の方ではない。数が出るのはファッション重視の方だ。店頭で手に取れるものの耐久性が低いのは、当然といえば当然だった。一方で、機能を優先して作られたものは、日本に入ってくる時点で高額になっている。球数も少ない。
丈夫で、ファッション性もあって、猟でちゃんと使えるもの(あと手頃なもの)。そう思って探していくと、行き着くのは古着だった。
現行品より、昔の商品の方が生地が丈夫だったりする。もっとも、古着屋に残っているのは破れなかった個体だけなので、そう見えて当然という話でもある。
Carhartt、Dickies、BEN DAVIS。そしてレミントンなどの銃器メーカーのアパレル。
自分が特に好きなのは、Carharttのダックベストだ。古着で1万円ほどで買った。

Carharttはもともと鉄道労働者向けの作業着だったものが、ストリートカルチャーに取り込まれた。
きっかけは、屋外で長時間活動するドラッグディーラーたちが愛用したことにあったようだ。理由は機能だった。とにかく丈夫で、寒さに耐える。
そこからヒップホップに広がり、ストリートファッションの定番として、今ではアメカジを語るうえで外せないブランドとなったらしい。
機能で選ばれた服が、後からファッションになった。服飾の世界ではよくある話だと思う。
とは言え、これをそのまま猟場で着るのはさすがにね・・・となった。オレンジが入ってないし。
ということで、このダックベストに近いモデルで、狩猟に使えそうなものを見つけて購入。
ポケットが「無い」のと同じ

これだけ丈夫なら…と思っていた。
すぐに分かった。ポケットが使えない。フラップが付いていないのだ。
フラップがないと、何が起こるか。落とす。スマホや財布を落とすなら、まだいい。だが実包は違う。
実包を落とす可能性は、限りなくゼロに近づけなければならない。落とすかもしれない場所には、入れられない。だったらこのポケットは、ないのと一緒だ。
そこでようやく理解した。質が落ちたかどうかの話ではなかった。そもそも猟のために作られていない。丈夫かどうかとは、別の問題だったのだ。
冷静に考えたらすぐにわかることではあった…
服が傷つくのが嫌でヤブに入れない
もう一つ。。
単独で山に入っているときの話だ。時間をかけてようやく見つけ出した狩猟用1着。貴重である。服が傷つくのが嫌になる。汚れるのが嫌になる。

ヤブ漕ぎをしたくない。正確に言えば、入る前に一瞬ためらう。あの藪を抜ければ近いと分かっていて、迂回する理由を探している自分がいる。
猟に行っているのに、猟でやるべきことができない。本末転倒である。ここで自分の中の結論が出た。猟装とファッションの両立は無理だった。
たとえばブレイズオレンジとの付き合い
無理だと書いた。それは今も変わらない。ただ、今の猟装を並べてみると、やっていることがある。
ブレイズオレンジは、とにかく目立つ。安全性にメーターを振り切ったカラーリングだと思う。
取り入れる難易度の高いカラーリングだと思う。でも、猟装のあちこちにあった方がいいと思った。だからまずは、「全体が整っている」という見え方を目指した。
色がどこか一箇所に偏らないように配置して、シルエットとして綺麗に見えるようにする。360度どこから見ても認識される状態になるので、結果としてこれは安全側の判断でもある。
ここからは完全に自分の趣味の話になるのだが、同じオレンジでも、少しでも色が違うと気になってしまう。
帽子、ベスト、グローブ。それぞれのブレイズオレンジの彩度や明度が揃っているか。柄の出方に統一感があるか。そこは細かく見ている。
そして、この基準で選ぼうとすると、合わせられる商品が驚くほど少ない。
結局どうなるか。同じメーカーで揃えることになる。
そうしてワークマンとモンベルに戻ってきた
保護、動きやすさ、通気性、快適性、断熱性、速乾性。ボトムス、ジャケット、インナー、ベスト、プロテクター、グローブ。全部を考えていくと、ここに行き着く。モンベルとワークマンである。

使っているカラーリングが決まっているから、合わせやすいというのもある。
そしてポケットには、ちゃんとフラップやジッパーが付いている。現場で物を落とす前提で設計されているかどうかは、こういうところに出る。
おしゃれかと言われれば、正直、惜しいものが多いとは思う。だが現場で動く人のために作られていることがよくわかるし、それなりにまとまっている。自分の評価はものすごく高い。
実はいろんな人から言われてはいた。ワークマンがいいよ、モンベルがいいよ、と。それでも自分で探したかった。必要なものは最初から目の前に提示されていたのに、気づくまでに一周しなければならなかった。
少し前に、SNSでこんな話が流れてきたことがある。
「モンベルを着ているおじさんはダサい」
モンベルはダサいのかダサくないのか。いや、モンベルはもともと登山で命を守るために作られたものだからダサくない。ロゴがなければいいのに。そんな意見が飛び交っていた。
妻に聞いてみた。どう思うか、と。
「モンベルがダサいとかダサくないとか言ってるのって、おしゃれに自信がない人でしょ。岩本照なんて全身ワークマンだよ」
妻が言うには、おしゃれというのはアイテムではないらしい、ということだ。色、シルエット、素材、柄。それを把握した上で全身を整えて、部分的に外しを入れる。それが噛み合ったときに、綺麗にまとまる。ブランドの問題ではない。
何が変わったか
機能で固め切った結果、変わったことがある。狩猟に100%集中できるようになった。
滑るかもしれない。濡れるかもしれない。落とすかもしれない。装備を信用できないと、そういう不安が頭の片隅に残り続ける。それが消えた。
それでも足元だけは
とはいえ、諦めきれない部分がある。
おしゃれは足元から、である。
巻き狩りに行くときは、スパイク長靴かスパイク足袋を履く。ここは機能一択だ。
個人で猟に行くときは、ブーツを履いていく。四つ足はダナーフィールド、ぬかるんでいるときや鳥撃ちのときはレッドウィングのエンジニアブーツ。


出猟のたびに傷は増えていく。だがその傷は、自分にとっては勲章のようなものだ。よく頑張ってきてくれたな、と思いながら、たびたび磨いている。
傷を避けたい服では、ヤブに入れなかった。傷が味になる革なら、泥だらけになろうが、獲物の血だらけになろうが、どこにでも踏み込める。
その先があるとすれば
おしゃれというのは本来、機能とは別のものを取り入れていく行為でもある。そう考えると、足元でやっていることが、まさにそれなのかもしれない。
機能だけで選んだ結果が今の猟装だとして、それは正解ではあっても、上がりではないのだろう。ワークマンとモンベルの上に、あと何を乗せられるか。
そこはまだ検討の余地があるかもしれない。



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